追悼・森繁久彌さん名作ドラマをもう一度「おじいさんの台所」
社会の高齢化が進む中で、家族のあり方、福祉の課題、社会の仕組みな様々な深刻な問題をドラマの中で提起しながらも、原作の持つ明るさ・ユーモアを十分に活かした作品。
(原作) 佐橋慶女
(脚本) 高橋正圀
(演出) 大山勝美
キャスト
佐藤真三/森繁久彌
次女・雅美/いしだあゆみ
長女・喜美/岸田今日子
三女・和美/風吹ジュン
前川さん/正司歌江
石井茜/阿知波悟美
喜美の娘・さおり/裕木奈江
牧幸子/司葉子
小島実/芦田伸介
【ストーリー】
名古屋市郊外の佐藤家では、肺ガンの宣告を受けてから10ヶ月の闘病生活の後、母が息を引き取った。何から何まで母任せだった父・真三が1人取り残され、口もきかない程しょげ返っていた。1人では何もできない父を、単身置いておくわけにはいかないと、三人の娘たちは、誰が父を引き取るか相談していた。
長女・喜美は、三人の中では家が一番広いので、引き取ることはやぶさかではないというが身体の悪い夫を抱える彼女には負担が大きい。
三女・和美も、マンションに呼んでもいいと考えていたが、鉢植えが趣味の真三には、庭がないことは問題だった。
反対ばかりする次女・雅美はと言えば、独身の気兼ねのいらない立場だったが、雅美の住まいはエレベーターなしのマンションで、しかも東京だった。
三人は、話し合いの結論を出せないまま、真三の意向を聞くことにすると、真三は、名古屋の家に残って一人暮らしをする決意をしていた。
会社勤めの経験もなく、家賃収入だけで暮してきたボンボンで、炊事洗濯まるでダメな真三。大正生まれの頑固者の選択だった。
その晩から、雅美が父の自立のために特訓を開始した。米の研ぎ方から、風呂の沸かし方まで、生活の手順を事細かに書いた紙を壁一面に張り付けて指導した。
ことある毎に、東京から名古屋へ出向いての雅美の特訓に、真三は「軍隊よりも厳しい。鬼軍曹だ」と愚痴をこぼした。
真三と雅美は、些細なことで何度もけんかを繰り返した。けんかの度に、雅美はもう面倒は見ないと断言し、真三はもうおまえの世話にはならないと応える。そんなけんかを繰り返しながらも、近所の主婦・前川の手助けを得て、真三は徐々に生活の手順を覚えていく。
老後の一人暮らしを、不器用ながらも快適に過ごそうとする真三と、それを支える雅美は、衝突を重ねながら、心を通わせていく。それまでにはなかった、父と娘の心の交流が生まれた。
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