金曜ロードショー「天空の城ラピュタ」
(1986年徳間書店)▽宮崎アニメの原点が初ハイビジョン放送!!空飛ぶ島は実在した?
天空の城ラピュタ◇86年、徳間書店。声・田中真弓、よこざわけい子。空中に浮かぶ伝説の島"ラピュタ"をめぐり、少年と少女が冒険を繰り広げる。宮崎駿監督。パズー(田中)は、空中に浮かぶ伝説の島"ラピュタ"の発見を夢見る少年。ある日、彼は青白い光を放ちながら空から降りてきた少女、シータ(よこざわ)を助けた。光の正体はシータのペンダントに付いている"飛行石"で、彼女はその石を狙う海賊一味と国防軍に追われていた。パズーはシータを連れて逃走するが、国防軍に捕らえられてしまう。一人釈放されたパズーは、海賊一味とともにシータ奪還に挑む。
宮崎駿, 宮崎駿, 田中真弓, よこざわけい子, 初井言栄, 寺田農, 常田富士男, 永井一郎, 糸博
【解説・みどころ】
このラピュタという題材は、「ガリヴァー旅行記」に出てくるエピソードから着想を得ているが、自由な脚色と創作によって全く独自な物語となっている。実は私もこの事実を知ってから読んでみたのだが、よくぞここまで話を広げた!と感心した覚えがある。
「風の谷のナウシカが、高年齢層を対象とした作品なら、パズー(本作品の仮題)は対象の中心を小学生とした映画である。風の谷のナウシカが、清冽で鮮烈な作品を目指したとすれば、パズーは愉快な血わき肉おどる古典的な活劇をめざしている」と、宮崎駿監督は企画書で書いている。
この作品は、複数回見ている方も多いのではないかと思うが、見る度に監督の意図するとおり、小難しい理屈抜きに波瀾万丈な二人と共にハラハラし、手に汗握る冒険をしている気にさせられていることだろう。しかもこの作品が公開されたのは今から20年以上も前。産まれたての赤ん坊が今じゃ立派に成人している程の長い年月が経っているわけだが、それでもなお色褪せることなく、むしろ大人になってからの方が色々と見えてくるのが、並外れた力量の宮崎監督ならでは・・・みんな一度は「目玉焼き乗せトースト」を食べているに違いない。
それ以外にも、よく見てみるとこんな物が、というものが結構登場している。軍の無線を傍受した時にドーラが取り出した暗号解読書に「ANGO」と書かれている・ドーラの寝室に掛けられている若きドーラがシータに似ている・ラピュタ崩壊時に実はムスカもちゃんと落下している・ナウシカでお馴染みのキツネリスが登場する・案外ドーラは女性っぽい色使いを好む等、見る度に新たな発見があると思うので探してみてほしい。
あらゆる面で見る物を楽しませてくれる宮崎監督に影響を受けたとされる監督は数多く、あのジョージ・ルーカスや、フランスの漫画家/アーティスト・メビウス(「フィフス・エレメント」のデザインを手がけた)等、海外の作家にも注目されるのもうなずける。そのフランスのメビウスだが、なんと自分の娘の名前をナウシカにしたというほどの筋金入りだという。
「アニメーションはまずもって子供のものであり、真に子供のためのものは大人の鑑賞に十分堪えうるものなのである。」まさに、宮崎全作品に流れるものはこれではないだろうか。飛行船からスッコーンと落ちるシータ、暗い廃坑道にほのかに光る飛行石、ラピュタの幻想的なたたずまい等、パッとしない日常をしばし忘れさせてくれる冒険活劇となっている。
次回作「崖の上のポニョ」では、「今回は、今までの作品のような緻密な絵とは違って、CGを使わない新しい描き方の長編に取り組んでいます。緻密さをなくすことで、アニメーションの楽しみは何なのかを考え、本来の楽しさを持ってやってみたい」ということである。老若男女、誰が何度見ても楽しめる作品であることを、楽しみに待つとしようではないか。
【ストーリー】
ある夜の空。その雲間を進む飛行船に、一人の少女が囚われていた。彼女の名前はシータ。飛行船は空中海賊に襲われ、海賊達が船内に乗り込むや、海賊一味と黒めがねの男達の間に銃撃戦が始る!危険を察知したシータは、窓づたいに逃げようとするが・・・足場を失い地表めがけて落下していった。その時地上では、鉱山町の機械工として働くパズーが、ゆっくりと落ちてくる物を発見し、急いで後を追っていた。その光はシータの胸のペンダントから発せられている物だった。
翌朝目を覚ましたシータに、パズーは今は亡き自分の父が見つけたという伝説の島の話をする。しかしその父は詐欺師呼ばわりされたまま死んでしまったため、自分が絶対に見つけて汚名を晴らしてやるんだ、ということを夢見ていた。そこへシータを襲った海賊ドーラ一味が探しにやってきた!彼らはシータの持っている、あの光るペンダントが目当てだったのだ。なんとか海賊から逃げ出す二人だが、結局最後は軍隊に捕まってしまった。
シータは、二人を捕らえた政府側の特務将校ムスカに連れられ、要塞最下層部の部屋に下りていった。彼女がそこで見せられた物は、空から落ちてきたという壊れたロボットであった。さらにシータがラピュタ王家の末裔である事を伝え、パズーの命と引き換えに協力を迫る。
シータの涙ながらの取引で解放されたパズーは、自宅で待ち受けていたドーラ一家に「男のくせにだらしない!」と叱咤されるも仲間にしてくれと懇願し、共にフラップターでシータ奪還に向かう。
要塞では、シータが幼い頃に教わった「秘密の言葉」を口にしたとたん飛行石がまばゆい光を発し、壊れていたはずのロボットが目覚めて暴れ出した!同時にその光はラピュタの方角を指し示していた。パズー達は強行突入でシータを奪還するが、要塞からの砲撃の衝撃で、シータは飛行石を落としてしまう。ムスカはペンダントを手に入れると、すぐさま飛行石の示す方へ進軍を始めた。また、パズーとシータを加えたドーラ一家も、シータが覚えていた飛行石の光の方角をたよりにラピュタへ向かう。
やがて巨大な低気圧の中心「竜の巣」に行く手を阻まれるが、パズーは父の言葉を思い出す。「竜の巣の中でラピュタを見て帰ってきた」というパズーの言葉にドーラは突入を決意するが、追ってきたゴリアテの攻撃を受け、ドーラ一家はそのまま竜の巣へ・・・
なんとかラピュタの空中庭園に到着したシータとパズーは、同じくラピュタに到着しつつも軍に捕らわれたドーラ一家を助けようと試みるが、途中でムスカと遭遇しシータは再び捕らえられ離ればなれになってしまう。パズーは捕まっているドーラ一家を開放し、自分はシータを助けに向かうという。その頃、ラピュタの力の根源である巨大な飛行石に到達したムスカは、シータに自分もラピュタ王家の末裔「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」だと明かす。
【キャスト・スタッフ】
< STAFF >
製 作 徳間康快
プロデューサー 高畑勲
原作・脚本・監督 宮崎駿
企 画 山下辰巳、尾形英夫
作画監督 丹内司
音 楽 久石譲
原画頭 金田伊功
美 術 野崎俊郎、山本二三
撮 影 高橋プロダクション、高橋宏固、白神孝始
編 集 瀬山武司、笠原義宏
協 力 株式会社電通
提 供 大映株式会社
制 作 スタジオジブリ
< CAST(声の出演) >
パズー 田中真弓
シータ 横沢啓子
ドーラ 初井言榮
ムスカ 寺田農
ポムじい 常田富士男
将軍 永井一郎
親方 糸博
おかみ 鷲尾真知子
シャルル(ドーラの長男) 神山卓三
ルイ(ドーラの次男) 安原義人
アンリ(ドーラの三男) 亀山助清
老技師 槐柳二
マッジ TARAKO
峰恵研
鈴木れい子
平井隆博
西村知道
大滝進矢
福士秀樹
古田信幸
大塚芳忠
田中和実
菅原正志
関俊彦
林原めぐみ
21年前…小学校六年生…
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