金曜ロードショー「マスク」
【解説・みどころ】
いつ観ても新鮮な笑いがそこにある。
スタンドアップ・コメディアンとしてキャリアをスタートさせ、『エース・ベンチュラ』(94)の大ヒットで注目を集めたジム・キャリーの人気を、不動のものとさせたのが『マスク』だ。緑の仮面(マスク)を被ると内面に潜んだもう一人の自分が呼びさまされるという、アメリカの同名カルト・コミックの原作の映画化なのだが、オリジナルコミックはかなりダーク。それを、脚本の力とジム・キャリーのコミカルな芸で、老若男女問わず誰もが爆笑できる一大エンターテインメントに仕上げている術は、さすがハリウッド。そのキャリーの顔芸は呆れるほどに見事。緑の仮面を被ったままでも自在に変幻するキャリーの表情を生かすため、特殊マスクの制作には予算と時間を費やし、いくつものラテックス製のピースが試作され、キャリーも毎回メイクに4時間をかけることに。その苦労の結果、あの緑の男が出来上がったのだ! 『トゥルーマン・ショー』(98)、『マン・オン・ザ・ムーン』(98)で2度ゴールデン・グローブ賞、主演男優賞を獲得したキャリー。3月20日に久々のコメディ、『イエスマン“YES”は人生のパスワード』が公開されるキャリーだが、本作ほどのオーバー・パフォーマンスは、やはり貴重。キャリーの芸の深さを再認識させられること、確実だ。ちなみに、キャリーがマスクを被り、“スタンリー・ザ・マスク”に変身した際に来ている黄色いスーツは、売れないスタンドアップ・コメディアン時代に、キャリーの母親がステージ衣装として縫ってくれたスーツからヒントを得たのだとか。
ジム・キャリーが演じる冴えない男、スタンリーが一目惚れをする美女役には、キャメロン・ディアス。お馴染み、『チャーリーズ・エンジェル』シリーズ、『イン・ハー・シューズ』(05)、『ホリディ』(06)などで知られ、今でこそハリウッド映画に欠かせない存在であり、かつファッションアイコンとしても世界的な注目を集める彼女だが、当時はまだまだ無名の女優だった。現に、当初は亡きアナ・ニコール・スミスがティナ役の有力候補だった。しかし、モデル事務所から出て行くキャメロンの姿を見かけたスタッフの一人が彼女に可能性を感じ、オーディションを受けさせることを勧めたという。しかし、いくらスタッフの後押しがあったからといって、簡単に役が手に入るほどハリウッドは甘くない。結局キャメロンはティナ・カーライルの役を得るために、12回もオーディションを重ね、役が彼女のものになったのは撮影のわずか1週間前だった。このとき、キャメロンは21歳。その瑞々しい美貌と若さを、はじけるような笑いとともに楽しめるオイシイ1作。キャリーとキャメロンのダンス・パフォーマンスもいいが、機関銃のように襲ってくる痛烈なギャグは超一級品。この笑劇をぜひとも、お見逃しなく!
【ストーリー】
スタンリー・イプキス(ジム・キャリー)は、冴えない銀行員。頼まれると「いや」と言えない性格ゆえに、同僚のチャーリー(リチャード・ジーニ)や女子行員たちにいいように使われている。そんなスタンリーのところへ口座を開設したいという、絶世の美女ティナ・カーライル(キャメロン・ディアス)が現れる。ティナはホットなナイトクラブ“ココ・ボンゴ”の歌姫かつ、クラブのマネージャーで銀行強盗を企てる悪人ドリアン(ピーター・グリーン)の恋人でもあった。その恋人に命じられ、銀行内部の様子をカメラで撮影するためにやって来ていたのだった。そんな裏があるとは露知らず、スタンリーは、彼女の美貌にメロメロ。一目惚れをしてしまう。
その夜、スタンリーはチャーリーに誘われ“ココ・ボンゴ”に行く。しかし、間が悪いスタンリーはひとりだけクラブに入店できず、散々な思いをする。さらに、車もエンストを起こし、橋の上で立ち往生。途方に暮れていると、橋の下を流れる川に人間らしき姿が見えた。あわてて川に飛び込み救助を試みようとしたスタンリー。だが、人間の顔に見えたのは、ゴミの塊に絡まった古ぼけた緑の仮面だった。最悪な夜を過ごしたスタンリーは流れで自宅へ持ち帰り、ふとした出来心で顔にあててみた。すると、その仮面は凄い勢いでスタンリーの顔に吸いつき、一瞬にして彼に信じ難い変化が生じた。鏡の前には、緑の顔をし、黄色の派手なスーツに身を包み、信じられないほどのエネルギーに満ちた怪人、“スタンリー・ザ・マスク”に変身した自分が立っていた。
その“マスク”の正体は、古代バイキングたちが「呪われた悪の化身」と恐れていた年代物。大昔にバイキングたちの手により地底の奥底に葬られたはずの仮面が、あろうことか現代に流れついてしまったのだ。
翌晩、ドリアン一味は銀行を襲う準備を整えていた。しかし、「いざ決行」という時に、“スタンリー・ザ・マスク”に変身したスタンリーが現れ、瞬時に大金をかっさらっていってしまう。そしてその足でココ・ボンゴに行った“スタンリー・ザ・マスク”は、仮面の不思議な力のおかげで、ダンスフロアでも一暴れ。超人的なステップでティナをリードし、めくるめく表情で彼女のハートを鷲掴みにしてしまう。しかし、翌日には、銀行のモニターに映った犯行映像と現場に残された手がかりから、スタンリーが強盗の容疑者として疑われることに。
一方、ティナは邪悪な心を持つ犯罪者のドリアンと別れたがっていた。もちろん、“スタンリー・ザ・マスク”に心が揺れていたのも事実だった。そこで仮面の男にもう一度会いたいと、スタンリーの元へ相談しに行く。相談を受けたスタンリーは、ティナが“スタンリー・ザ・マスク”に興味を持っていることを嬉しく思うが、同時に「マスクの男は自分だ」と告げたら、彼女は減滅してしまうのではないかと悩む。結局、仮面をつけて彼女に会いに行く。しかし、スタンリーは警察に追われる身。さらに、銀行のお金を横取りされ、今度はティナまで奪われそうになっているドリアンにも追われることに。そんな時、あろうことか仮面がドリアンの手にわたってしまう! 仮面なしではどうにもならないスタンリー。悪の手先に無限の力が備わる仮面が渡ってしまったら、街は、愛するティナはどうなる? ……と、その前にスタンリーの身はどうなる??
【キャスト・スタッフ】
<監督>
チャールズ・ラッセル
<製作>
ボブ・エンゲルマン
<脚本>
マイク・ワープ
<原作>
マイケル・ファーロン
マイク・ヴェルハイデン
<製作総指揮>
マイク・リチャードソン
チャールズ・ラッセル
マイケル・ドルカ
<撮影>
ジョン・R・レオネッティ
<プロダクション・デザイン>
クレイグ・スターンズ
<編集>
アーサー・コバーン
<音楽>
ランディ・イーデルマン
<衣装>
ハ・グエン
<ヴィジュアル・エフェクト>
ケン・ラルストン
<スペシャル・ヴィジュアルエフェクト>
インダストリアル・ライト&マジック
<メイクアップ>
グレッグ・キャノン
<ミュージック・スーパーバイザー>
ポニー・グリーンバーグ
<キャスティング>
ファーン・チャンピオン、c.s.a
マーク・パラディーニ
<スタンリー・イプキス/スタンリー・ザ・マスク>
ジム・キャリー(山寺宏一)
<ティナ・カーライル>
キャメロン・ディアス(井上喜久子)
<ミッチ・ケラウェイ>
ピーター・リーガート(若本規夫)
<ドリアン>
ピーター・グリーン(大塚明夫)
<ペギー・ベラント>
エイミィ・ヤスベック(高島雅羅)
<チャーリー・スクアーカー>
リチャード・ジーニ(大塚芳忠)
<ニコ>
オレステス・マタセナ(麦人)
<アーブ>
ティモシー・バーグレイ(柳沢栄治)
<ピーンマン夫人>
ナンシー・フィッシュ(青木和代)
<マイロ/犬>
マックス
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